
便秘にはどんな症状がある?腸のしくみや主な原因から医師が解説。
便秘はよく知られている病気ですが、
どんな症状が便秘にあてはまるのか知っていますか?
監修 横浜市立大学附属病院 中島淳先生
便秘解消に役立つ資料も
ご用意しております。
便秘の症状とは?
便秘は、便を体外へ十分に出し切れない状態のこと。
便は、食べた物が、体内の消化管で消化され、必要な栄養素が吸収された後に排泄される” 残りかす” です。
したがって、便が体内に溜まってしまうと、おなかが張って苦しくなったり吐き気や食欲低下につながったりと、体が不調になるようなさまざまな症状が現れることがあります。
便秘の主な症状
- 排便が少なくなった
- お腹が張って苦しい
- 排便してもスッキリしない
- オナラがよく出る
- 便意はあるけど排便できない
- 吐き気がある
- お腹が痛い
- 食欲がない
便秘の定義:医療に関する学会では、便秘を定義しています。
- 「 3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」【日本内科学会】
- 「 排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が
低下している状態(硬便)を指す」【日本消化器病学会】


症状チェックシートを活用して、病院で受診しよう
事前に用意したチェック項目に回答すると、問診票が作成されます。
作成された問診票をスマホやタブレットで医療機関に提示すると、
スムーズな診察ができます。
便秘の原因
便秘の原因はさまざまで、いくつかの原因が複雑に絡み合って起こることもあります。
主な原因は、食事や水分など体に必要な栄養分を十分にとれない、運動不足、精神的なストレス、がんの治療に用いる薬や痛み止めの副作用などがあります。


便秘の種類
ひとことに"便秘"といっても、その原因によって腸内で起きている異変はさまざま。便秘には、主に腸の機能が低下して起こる「機能性便秘」と、何らかの原因で大腸の形自体が変化して起こる「器質性便秘」の2つの原因があります。
思い当たる症状や原因を振り返ることで、あなたの便秘のタイプがわかるかもしれません。
【機能性便秘】
便秘の中で最も多いタイプ。生活習慣やストレス、加齢などの影響を受けて、大腸をはじめ直腸・肛門など、排便機能の働きが乱れることで便秘になります。
機能性便秘は、症状によって「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つに分類されます。
排便回数減少型
排便回数や便の量が減少し、沢山の便が大腸に溜まってしまうため、お腹の膨満感や痛みなどが起こります。さらに症状によって「大腸通過遅延型」と「大腸通過正常型」に分けられます。
①大腸通過遅延型
主な症状
- 排便の回数が少ない
(排便回数が1週間に3回未満) - 大腸に多量の便が溜る
- お腹に強い膨満感がある
原因
- 大腸の動きが弱い、ストレス
- 運動不足、他の病気がある
- 薬の副作用、原因不明の特発性

②大腸通過正常型
主な症状
- 排便の量が少ない(結果、排便の回数も少なくなる)
- 便が硬く排便しにくい
原因
- 過度な小食、偏った食事、ダイエット、食物繊維不足

排便困難型
直腸や肛門の排便機能が低下し、直腸内の便を充分に排出できなくなってしまい、もよおしてもなかなか排便できない、スッキリしないなどの残便感が生じます。
さらに症状によって「大腸通過正常型」「機能性便排出障害」に分けられます。
①大腸通過遅延型
主な症状
- 便が硬い
- 排便が難しい
- 過度の怒責(いきみ)
原因
- 水分摂取量が少ない
- 大腸で過剰に水分が吸収され、便が硬くなる

②機能性便排出障害
主な症状
- 排便が難しい
- 残便感がある
原因
- 便意を我慢する習慣があるため、
直腸の排便反射(便意)が弱くなる

【器質性便秘】
大腸がんや手術後の癒着、炎症性疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、閉そくなどのために、大腸の中を便がスムーズに通過できずに便秘が起こります。
器質性便秘は、症状によって「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つに分類されます。
排便回数減少型
大腸の管腔(管状の器官の内側の空間)が拡張してしまい,便の流れが妨げられる。
主な症状
- 食べてから排便まで時間がかかる
- 排便の回数が少ない
排便困難型
直腸の形が変わってしまい,直腸から体外へ便を充分に排出できない。
主な症状
- 排便が難しい
- 残便感がある
このような器質性便秘が原因で、排便できなくなることを「器質性排出障害」といいます。
器質性便秘には、大腸がんやクローン病など大きな病気が隠れていることがあるため、医師に相談することをおすすめします。
さらに、こんな症状が出たら要注意!
発熱、ひどい腹痛、嘔吐、血便、便の色の異常(タール状や粘液性の便も)
便秘のお悩みQ&A
男性に比べて女性が便秘にかかりやすい?
女性が便秘になりやすいといわれていますが、その原因はいくつか考えられます。

【女性ホルモンの影響】
女性ホルモンの「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、大腸のぜん動運動を抑える作用があります。そのため、黄体ホルモンの分泌が活発になる排卵~月経までの期間になると、便秘になる場合もあります。
【筋力不足】
腹筋は便を外に押し出すのに必要な筋肉ですが、女性は比較的に腹筋力が弱いため便秘になりやすいといえます。
【ダイエットと水分不足】
食事を制限するダイエットを行うと、食物繊維や水分の摂取量も減るため、便が硬くなり排便しにくくなるでしょう。
妊娠中に便秘になったらどうすればいい?
妊娠中はホルモンバランスや日常生活が変化し、つわりなどで十分な水分や食物繊維を摂りにくくなるため、便秘になってしまう人もいます。

妊娠中の便秘は、子宮を圧迫しお腹が張りやすくなるため不快感やストレスになることも。医師の処方のもとで妊娠中でも適切に飲める便秘薬を使用しながら、便秘を我慢せずに快適な妊娠生活を送ることをおすすめします。
便秘と大腸がんの関係ってあるの?
大腸がんが進行すると、大腸が狭くなるため排便がスムーズに行えなくなり便秘になることがあります。

便秘の症状から病気を特定するのは難しいため、病院で大腸内視鏡検査を行う方法があります。内視鏡検査で腸の長さや腸の走行の具合を見ることによって便秘の原因を推察することができ、大腸がんの元となる大腸ポリープの有無を調べることもできます。

症状チェックシートを活用して、病院で受診しよう
事前に用意したチェック項目に回答すると、問診票が作成されます。
作成された問診票をスマホやタブレットで医療機関に提示すると、
スムーズな診察ができます。
便秘の原因や症状は複雑。病院で適切な診断・治療を受けることが大事
便秘は、さまざまな原因や症状が複雑に絡み合って起こります。したがって、つらい便秘を解消したいときは、自己判断せずに、医師による適切な診断・治療を受けることが大切です。
まとめ
こんな症状があるときは、すぐに受診を
- 3日以上排便がない
- おなら(排ガス)が出ない
- 下剤を使って1~2日たっても便が出ない
- おなかがひどく張る
- 腹痛や嘔吐(おうと)がある

- 監修
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横浜市立大学附属病院
中島 淳 先生
横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室 主任教授、診療科部長。医学博士。
1999年から2001年までハーバード大学客員准教授を務め、腸管免疫の研究にあたる。医療従事者向けの「慢性便秘症診療ガイドライン」作成メンバーとして尽力し、海外の便秘薬や最先端治療に精通。
※2022年12月現在の情報です。
【腸内環境の悪化】
便秘になると、体外へ排出するはずの便が腸内にたまって腐敗が進むため、腸内細菌の悪玉菌が増えていきます。悪玉菌が増殖するときにガスが発生するため、お腹が張ったりおならが出てしまうことがあります。
【老廃物質の蓄積】
さらに悪玉菌がつくった老廃物質が、血液を介して全身を巡り汗や皮脂とともに皮膚から体外へ放出される際に、皮膚に溜まって肌荒れを起こしてしまうことがあります。
まずは規則正しい生活や腸によい食事をとり、老廃物である便をしっかり出すように心がけましょう。