意外と知らない⁈
こどもが便秘になる原因
子ども特有の便秘の原因や便秘になりやすい時期や、理想のウンチの状態や小学校のトイレ事情まで、意外と知らない子供の便秘について解説。
監修 学校法人神戸学園 理事・校長 中野美和子先生
意外に知らない子供の便秘!
そもそもどうして便秘になるの?
食べた物は、腸で大半の水分が吸収され、残りかすが便として排出されます。
しかし、便が腸に長くとどまると、水分が多く吸収され、便が硬くなってしまいます。
また、便が肛門の近くまできていても、うまく排出できない場合もあります。
排便の回数が少なかったり、便が出にくい状態になっていれば便秘と考えます。
目安として、週に3回未満だと便秘が疑われますが、毎日排便があっても、排便するときに痛みがあったり、スッキリとした排便でない場合は、便秘の可能性があります。
便の形や硬さの理想は、表面がなめらかでやわらかい、いわゆる『バナナ状』の便です。
腸に便がたまりすぎると、硬くて小さいコロコロの便になったり、ゆるい便が少しずつ1日に何回も出たりする場合があります。1〜3歳のお子さんではおとなからみるとよい便(バナナ便)であってもその子にとっては「硬い」と感じることもあり、軟便であれば出しやすいと感じます。子供によってどういう便が出しやすい便か異なります。
お子さんの便の状態をチェックして、理想のウンチをめざしましょう。
ブリストル便形状スケール
Lewis SJ, et al.: Scand J Gastroenterol 1997; 32(9): 920-924 より作成
子供の便秘って多いの?少ないの?
子供の便秘はめずらしいことではなく、日本の小学生を対象にした以下の調査では、便秘状態であった児童は約2割程度であったと報告されています。
小学生の便秘実態
対象:小学生の保護者4,833名
方法:インターネットによるアンケート回答方式(調査画面の前に子供が同席のもと、保護者が代理回答)
RomeⅢ※の定義に照らし合わせ、本調査では下記条件のうち2つ以上に合致する人を「便秘状態にある」と定義する。
・排便頻度が3日に1回以下、・便失禁がある、・便を我慢することがある、・便が固い、・トイレが詰まるくらい大きな便が出る
- ※RomeⅢ基準とは2006年に発表された慢性機能性便秘症の国際的診断基準
出典:小学生の排便と生活習慣に関する調査 NPO法人 日本トイレ研究所 2016年6月
うちの子、どうして便秘になるの?
母乳から人工乳へ変えたとき、離乳食を始めたとき、トイレトレーニングのころ、幼稚園や学校へ通いだしたころに、子供は便秘になりやすいといわれています。
トイレトレーニングのころには、慢性的な便秘もはっきりしてくることもあります。
便秘になりやすい時期
乳・幼児期
母乳・ミルク不足、汗のかきすぎは便秘の原因のひとつになることがあります。しかし原因不明の場合もあります。
食事の変化(母乳⇒人工乳、離乳食の開始)によっても便秘が起こりやすくなります。
幼児期では、排便のときに痛い思いをすると、排便をがまんしてしまうようになります。
学童期
小学生になると、学校でトイレに行くのをためらい、排便をがまんしてしまう子供がいます。
かたよった食事や、ゆっくりトイレに入る時間がないといった生活習慣も便秘と関係しています。
このほか、腸や肛門の生まれつきの病気や全身の病気が原因で便秘になることもあります。
『学校でウンチはしにくい…』そう感じているお子さんは少なくありません。
実際、小学生の約2人に1人が学校で排便しておらず、学年が上がるほど排便時に人目を気にする傾向があることがNPO法人日本トイレ研究所の調査で明らかになっています。
和式トイレや、においも学校でウンチをしたくない理由に挙がっています。
そのため、日本各地で学校のトイレを少しでも快適な空間に変える活動が行われています。
そしてこうしたトイレ環境の整備だけでなく、便秘にならないようにするために、「排便の大切さ」を教えていく取り組みも行われており、空間と教育の両面からトイレ事情が変わってきています。
対象:全国の小学生の保護者、小学生の子供と同居している人(20~59歳の男女)(N=4,777)
方法:インターネットによるアンケート回答方式(調査画面の前に子供が同席のもと、保護者が代理回答)
期間:2017年3月28日~3月31日
便秘治療が相談できる病院が検索できます。
ひどい便秘でお困りの方は、病院で受診するのがおすすめです。
医師による適した治療を受けることが、便秘を解消する一歩になります。
- 監修
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学校法人神戸学園 理事・校長
中野 美和子 先生
慶応義塾大学病院、国立小児病院(現:国立成育医療研究センター)などを経て、さいたま市立病院小児外科部長。昨年退職し、現在は非常勤で外来を行っている。排便障害を持つ外科疾患の排便管理と合わせ、一般の小児慢性機能性便秘症、特に難治例の治療に携わる。
※2023年6月現在の情報です。