妊婦が便秘になる原因は?女性の便秘の特徴と絡めて解説
このページでは、女性の便秘の特徴と妊娠中に便秘になる原因について解説しています。女性ならでは要因も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。また、便秘が気になる方は早めにかかりつけ医・定期検診している産婦人科に相談することをおすすめします。
監修 広島大学病院 阪埜 浩司 先生
このページでは女性の便秘の特徴を踏まえつつ、妊娠中の便秘の原因についてご紹介していきます。
女性の便秘の特徴
まずは、女性の便秘の特徴についてご紹介していきます。
女性は男性よりも便秘を自覚している
女性は男性よりも便秘を自覚している方が多いようです。日本人のお通じ習慣について国内の成人男女20~79歳(5,155人)を対象に行ったインターネット調査の結果、下の図のように男性が19.1%、女性が37.5%と、女性は男性に比べて便秘を自覚している割合が高いことがわかりました。
Tamura A, et al. J Neurogastroenterol Motil 22(4) 677-685, 2016 より作図
図1:日本人のお通じ習慣について
女性はお通じの回数が少なく、硬便が多い傾向にある
女性はお通じの回数が少なく、硬便の方が多い傾向にあります。
先ほどのインターネット調査にて1週間あたりのお通じの回数を調査したところ、男性が平均約7.9回、女性が平均約5.9回であり女性の方がお通じの回数が少ない結果となりました。
Tamura A, et al. J Neurogastroenterol Motil 22(4) 677-685, 2016
図2:1週間あたりのお通じの回数
さらに便の形状については、硬便と答えた人の割合は男性が13.6%、女性が25.0%であり、男性と比較して女性の方が硬便の割合が約1.8倍高いことがわかりました。
*1)Lewis SJ, et al. : Scand J Gastroenterol 1997; 32(9) : 920-924 より改変
*2)Tamura A, et al. J Neurogastroenterol Motil 22(4) 677-685, 2016 より作図
図3:硬便の人が占める割合
女性の大腸通過時間は男性と比べて長い
大腸通過時間とは食事を摂取してから排便されるまでの時間のことをいいます。
海外にて様々な試験を行った結果、女性の大腸通過時間は男性と比べて長いことがわかりました。*3)
(健康な男女42名を対象に大腸通過時間を調査した海外データによると、男性は22.3時間、女性は30.1時間だったと報告されています。*4))
女性は黄体期に入ると黄体ホルモン(女性ホルモン) の影響で大腸の運動が低下することから、大腸の便を運ぶ力が弱くなります。次の女性の便秘特徴4でもご紹介する通り、大腸内に便が留まり続けると結果的に便秘を引き起こします。
*3)Graff J, Brinch K, Madsen JL. Clin Physiol 21:253-259, 2001
*4)Jung HK, et al. Korean J Intern Med 2003; 18(3)181-186
女性ホルモンの作用で便秘になりやすい
月経は卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンによって調整されており、このうち、黄体ホルモンが便秘に影響します。
医療情報科学研究所、病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版、株式会社メディックメディアより改変
図4:女性ホルモンの変動の様子
黄体ホルモンが増えると平滑筋という内臓の筋肉の運動が抑えられ、便を直腸まで運ぶ大腸の運動も弱くなり、便が長時間大腸内に留まってしまいます。
そして大腸は便の水分を吸収するはたらきがあるため、やがて便が硬くなります。硬便になると排便しづらくなるため、便秘へとつながります。
月経の10日間ほど前は黄体ホルモンの働きが活発になるので便が出にくくなり、月経が始まると黄体ホルモンの動きも弱くなるので便を出しやすくなります。
このことから、女性は便秘になりやすい時期とそうでない時期を繰り返しているのです。
前田孝文、男の便秘、女の便秘、医薬経済社、P.32-33
医学者出版著、レジデント第11巻、2018、P.32
女性は便秘を自身で対処しようとする
女性は男性と比べると若い頃から便秘で悩んでいる方が多いといわれており、自分は便秘だと自覚しています。
しかし、病院で治療を受けようとせずに、栄養バランスの良い食事を心がけたり、市販の便秘薬を服用したりするなど自身で便秘を対処しようとする方が多いように感じます。
ただ、市販の便秘薬を自己流で使用すると徐々に体が慣れて薬の効果が薄れてしまい、いざ便秘治療を開始しようとしても難しくなってしまうこともあるのです。
前田孝文、男の便秘、女の便秘、医薬経済社、P.25-30
上記以外ではダイエット目的で食事量を減らす、スカートなど体を冷やすような服装で過ごして自律神経が乱れる、学校ではトイレを我慢するなど女性は便秘になりやすい環境でいることが挙げられます。
前田孝文、男の便秘、女の便秘、医薬経済社、P.28
妊娠中の便秘の原因
便秘は、妊娠中の胃腸の不調として吐き気に次いで2番目に多い症状とされています。では、なぜ便秘を引き起こしてしまうのかをご紹介していきます。
つわりによる食事の乱れ・水分不足
妊娠初期はつわりによる食事量の減少や食事の乱れ、水分不足が便秘の原因となります。
毎日決まった時間に食事ができなかったり朝食を抜いてしまったりすると、便を直腸まで運ぶ大腸の運動が起こりづらく、お通じに影響が出てしまいます。
また、つわりで嘔吐があると水分不足に陥りやすくなります。水分不足になると便が硬くなってしまうので、便秘を引き起こします。
Fan W, et al. Int J Clin Exp Med 2020, 13(3). 2022-2026
ホルモンの変化
女性ホルモンの変化の影響で便秘が引き起こされることもあります。
妊娠中は黄体ホルモン(プロゲステロン)が増加します。黄体ホルモンは腸の動きを抑えてしまうので硬便になり、結果として便秘を引き起こしてしまいます。
Catarina Frias Gomesa,et al,Annals of Gastroenterology (2018) 31, 385-394
直腸の圧迫
妊娠中は胎児が成長するにつれて子宮が拡大します。子宮が大きくなると直腸を圧迫し、便の流れが妨げられお通じに影響が出ます。
Fan W, et al. Int J Clin Exp Med 2020, 13(3). 2022-2026
心理的な要因
妊娠するとこれまでの生活が一変することや出産への不安が大きくなります。
不安は自律神経などに影響を与え、大腸の働きが低下して便秘につながります。
Fan W, et al. Int J Clin Exp Med 2020, 13(3). 2022-2026
便秘を放置すると?
便秘を放置すると、体に不調が出てきたり脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まったりすることが報告されています。しかし、これは妊娠中に限らず一般の方にも起こりうることなので、便秘は放置せず定期健診をしている産婦人科に相談するようにしましょう。
また、妊娠中の便秘はQOL(Quality of Life:生活の質)の低下につながります。
お腹の張りや食欲不振からの食事量の減少、倦怠感からの運動量減少はストレスの元となり、これにより便秘になりやすくなるという悪循環に陥ってしまうこともあります。
医学者出版著、レジデント第11巻、2018、P.33
妊娠中の便秘は産婦人科で相談できます
妊娠中の便秘は定期検診をしている産婦人科での診察が可能です。
便秘を治療することで「いきみ」をへらし、すっきりしたお通じにつなげることができれば、妊娠中の悩みの1つを解消できると思います。
まずはお気軽にご相談ください。
いしゃまち病院検索は、現在地や駅名を入力して検索すると、
便秘について相談できる病院を簡単に探すことができます。ぜひご活用ください。
便秘治療が相談できる病院が検索できます。
ひどい便秘でお困りの方は、病院で受診するのがおすすめです。
医師による適した治療を受けることが、便秘を解消する一歩になります。
- 監修
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広島大学病院 周産母子センター 准教授
阪埜 浩司 先生
日本産科婦人科学会産婦人科指導医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍指導医、日本臨床細胞学会細胞診指導医であり産婦人科領域の最新の診断・治療に精通。
※2024年2月現在の情報です。