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便秘は精神疾患の方に見られる症状の1つであり、統合失調症患者では2年間の有病率が36.3%、うつ病患者では4年間の有病率が57.7%と報告されています1)。
便秘はQOL(Quality of Life:生活の質)を低下させるだけでなく、近年の研究では生命予後にも影響を及ぼす可能性があると報告されています。
1)Janique G Jessurun, et al. J Clin Psychopharmacol. 2013 Aug; 33(4): 587-90.
精神疾患における便秘の主な要因は、自律神経の乱れ・ストレス・生活リズムの乱れ・運動不足・服用している薬の影響が挙げられます。
精神疾患の方は昼夜逆転などで生活リズムが乱れ、自律神経に不調をきたすことが多いです。
ストレスが加わることでも交感神経が優位になり、腸の動きが抑制されます。ストレスをため込まずに、副交感神経を高めるようリラックスすることが大切です4)。
精神疾患の方は生活リズムが乱れることが多いです。例えばうつ病の方は、食事・水分量・運動量の減少が生じ、便秘になりやすくなります。
統合失調症の方は、興奮状態の時は食事を摂らなかったり、脱水になったりするので便秘になりやすいです。
このような時はお通じの習慣が崩れやすく、お通じのタイミング(便意)を逃して我慢することが多くなります。これを繰り返すと直腸の感覚が鈍くなり次第に便意を失ってしまい、便秘になってしまいます5)。
精神疾患の方は症状が進んでいくと、意欲低下・* 発動性低下・無為自閉も目立つようになり、運動量が減少します6)。
* 発動性低下=意欲がなく、自ら行動を起こさずに1日中ぼーっとしている状態、無為自閉=人との関りを持たず、何もやる気が起きなくなる状態
7)中島淳, すべての臨床医が知っておきたい便秘の診かた, 羊土社, P.176
8)中島淳, すべての臨床医が知っておきたい便秘の診かた, 羊土社, P.34
精神疾患の方の便秘は、先ほど述べた生活習慣や服用している薬の影響が大きいのでまずは生活習慣等の改善を行うのが良いでしょう。
バランスの取れた食事を心がけたり、ラジオ体操で体を動かしたりできることをしていきましょう。また朝食後は大腸の動きが活発になるので、便意がなくても朝食後は3分ほどトイレに行ってみてください9)。
症状やその日の体調によってうまくいかないこともあるかと思いますが、無理をせずまずは1つでも良いのでできることをやってみましょう。どうしても便秘が解消しない場合は、今通っているかかりつけ医に相談してみてください。
便秘の治療薬には様々な種類があるので、あなたに合った薬を処方してもらうのが良いでしょう。
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国際医療福祉大学 消化器内科統括教授 熱海病院 病院長 中島 淳 先生
1999年から2001年までハーバード大学客員准教授を務め、腸管免疫の研究にあたる。医療従事者向けの「便通異常症診療ガイドライン2023」作成メンバーとして尽力し、海外の便秘薬や最先端治療に精通。医学博士。
※2025年5月現在の情報です。
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