小児が便秘になりやすい3つの時期

ここがポイント
  • 乳児期の便秘治療アップデート 「排便をがんばらせない」
  • トライアンドエラーを恐れず、個々に合った治療の見極めを
  • 入園、入学ストレスで便秘になる学童期には「トイレ習慣作り」

小児便秘は乳児期、幼児期、学童期の3つの時期になりやすいと言われています。発症する時期によって原因が異なるため、それぞれに合った治療をすることが大切です。

監修さいたま市立病院 小児外科 中野美和子先生

便秘の発症の時期から、原因と治療ポイントを見極める

便秘になりやすい3つの時期と原因

乳児期

母乳や哺乳量の
不足が原因で便秘に

幼児期

トイレットトレーニングや
生活習慣、食事などが
原因で便秘に

学童期

小学校入学などの
環境の変化が
原因で便秘に

3つの発症時期における治療のポイント

乳児期の便秘:自力でがんばらせず、肛門刺激から始める

乳児期は、母乳そのものや哺乳量が少ないことが原因で、便秘を発症することがあります。またはっきり原因が特定できない方も少なくありません。

現在、乳児用の慢性便秘症診療ガイドラインはありませんが、基本的には「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」(2013年発行)に沿った治療で、乳児でも週3回の排便を目指してよいと考えます。

便が出ない場合「無症状ないし便を出そうとして息んでいる程度なら、様子をみてよい」という意見と、「週3回の排便を目安とし、便が出ない場合は肛門刺激などで排便させよう」という意見とがあります。私自身は、排便させた方がよいと思っています。また、「出そうとしてとても苦しそう」「吐乳がある」「睡眠中に起きてしまう」などのときは出してあげた方がよいでしょう。

肛門刺激はまず綿棒で行い、その方法で出ない場合には浣腸を用います。慢性便秘症と診断し、薬物治療が必要な場合は、浸透圧性下剤のラクツロースやマルツエキスなどを処方します。

綿棒刺激のやり方(指導のポイント)
  1. 普通サイズの綿棒の先端、3センチくらいをベビーオイルなどで湿らせる
  2. オムツを敷いて、オムツを替えるときに同様に赤ちゃんの両足を持ち上げる
  3. 最初から肛門の中に綿棒を入れず、まずは、肛門をつついて刺激を与える
    (これだけで排便する場合もあります)
  4. 肛門に綿棒を当てて、穴を開く感じで円を描くように動かしながら、背中側に向けて綿棒の綿の部分を差し込む
    (綿棒の1/2~1/3くらいをしっかり持って動かさないように注意する。綿棒の持つ手は、綿棒の先から3センチ以内とし、それ以上入らないように注意する)
  5. 肛門の中で、ゆっくり円を描くように動かす
    (綿棒をくるくる回すだけでもよい。肛門を傷つけないように、やさしく、無理に動かさないこと)
  6. 時間は、3分くらいを目途に、出なくても一旦、綿棒を抜いてお休みをする。一日3回まで(朝、昼、晩)くらいを目途にするように伝える。哺乳ごとに行っても可
  7. 授乳後排気させてから(30分以内)または膨満があれば授乳前でも、おなかのマッサージ、足首を持って、両足をおなかにつけてバタバタする運動なども合わせて提案する

幼児期の便秘:個々にあった適切な治療を探る

幼児期の便秘は、イヤイヤ期にあたる2歳前後に発症することも多く、2~4歳のトイレットトレーニングの時期は、便秘発症のピークだと言われています。この時期の幼児は、自我が芽生え、いろいろなことにこだわりを持ったり、食事が偏食気味になったりします。また、トイレットトレーニングも開始されることも多いため、生活習慣、食事などさまざまな原因で便秘が発症します。

幼児の便秘治療は、生活指導や食事指導だけでなく、薬物治療との併用を考慮します。必要に応じて、浣腸から始め、追加の薬物治療が必要な場合にはポリエチレングリコール、ラクツロース、酸化マグネシウムなど便を軟らかくする薬剤を処方します。排便を嫌がらない、痛がらないようにして排便に対する恐怖心を取り除くことが大切です。処方した薬剤が効かない場合には、薬剤の量を調整し、刺激性下剤など作用機序の異なる薬剤に切り替えることも考慮することが大切だと思います。

幼児期の便秘は、病態によって、浸透圧性下剤がよく効く場合が多いのですが、刺激性下剤がよく効く場合もありますので、幼児の病態に合わせて、適切な薬剤を選択することが大事です。一人ひとり異なる病態に対応するためには、トライアンドエラーで薬剤の反応を判定しながら、相手に合う適切な薬剤を見極めていく必要があるでしょう。

トイレットトレーニングは、便秘を悪化させたりする場合もありますので、治療を行い、規則的な排便習慣が確立し、出しやすいように便性を調節してから始めることもお勧めします。

  • ※小児適応なし

学童期の便秘:毎日トイレに座る習慣づけが効果的

学童期の便秘は小学校への入学などをきっかけに発症することが多いようです。幼稚園や小学校のような教育機関では、環境の違いから緊張が続くことで腸の動きが悪くなることに加えて、小児がトイレに行ける時間が決まっていますので、さらに排便を我慢してしまうため、便秘が発症してしまいます。また、自宅以外のトイレに慣れていないため、入学直後は学校のトイレを使うことをためらってしまうのも原因の一つに挙げられます。

小児は環境の変化により排便を我慢し、腸に便を溜めてしまっているので、学童期の便秘治療はまず、毎日、トイレに座らせる習慣をつけることが大切です。小児は長時間座っていることができないため、長くとも3分以内がよいでしょう。長くいきませることは肛門脱などの原因にもなります。長く座らせすぎないように、保護者に伝えることも大切です。

こういった一過性の便秘は、一学期の終了時には小児の緊張が解け、便秘が改善することが多いようです。

なお、便が何日も出ない場合には、一時的に薬剤を使用して排便を促し、排便リズムを取り戻す手助けをしてあげることも考慮してください。

監修

さいたま市立病院 小児外科
学校法人 神戸学園 理事
神戸動植物環境専門学校 校長

中野 美和子 先生

慶応義塾大学病院、国立小児病院(現:国立成育医療研究センター)などを経て、さいたま市立病院小児外科部長。昨年退職し、現在は非常勤で外来を行っている。排便障害を持つ外科疾患の排便管理と合わせ、一般の小児慢性機能性便秘症、特に難治例の治療に携わる。
※2019年3月現在の情報です。