小児便秘の診察のポイントと問診項目

ここがポイント
  • 小児便秘で診察してほしい4つのポイント
  • 小児の便秘治療の第一歩は保護者が子供の便に関心を持つこと
  • 小児の便秘症状を把握する問診項目:【ダウンロードあり】

小児の便秘診療は、多くはクリニックでの診察から始まります。診察で診るべきポイントを理解するとともに、保護者には「子供と一緒に治療に取り組むスタンス作り」の働きかけも必要です。

監修東京女子医科大学 小児科学講座 永田智先生

かかりつけ医で掘り起しと見極めを
ー 小児便秘診察のポイント

診察で注意して診てほしい4つのポイント

便秘症状を訴える小児の受け皿となるのはプライマリケアを行うクリニックです。クリニックで小児便秘を診察する際に注意して診てほしいポイントは「排便回数」「硬便の既往」「下着やおむつが汚れる兆候」「排便痛」の4つです。以下の4点が確認されれば、小児の慢性便秘症と診断できるため、まずは診察で状態を正しく把握し、見極めをしていただきたいと思います。

  1. 排便回数
    排便回数が週に2回以下かどうか。週2回以下の場合、その時点で便秘と言えます。
  2. 硬便の既往
    週に3回以上排便があったとしても、硬いコロコロした便であれば、正常な排便ではありません。
  3. 下着やおむつが汚れる兆候の有無
    便塞栓があると「溢流性便失禁」が起こり、便塞栓の周りから便が漏れ、下着やおむつが汚れることがあります。
  4. 排便痛
    排便痛がある場合、小児が排便を痛がってトイレに行きたがらなくなります。

小児の便秘治療は保護者と一緒に取り組む

便秘の子供の保護者は、子供の便のことを把握していないことが多いです。診察で保護者に排便回数を尋ねると、保護者が子供に向かって「どのぐらい出ているの?」と聞きますが、多くの場合、小児は明確に答えられません。

小児の便秘治療の第一歩は、保護者が小児の排便に意識を向け、便がちゃんと出ているかを実際に把握することです。まずはそこから始まります。保護者に「子供の便の回数・量・硬さ・痛みの有無を気にかけて、見てあげてください」と伝えることが、最も重要な指導です。

小児便秘の原因となる生活習慣には、保護者の生活習慣が影響しています。一方で、生活習慣は各家庭の事情もあり、すぐに改善できないことも多くありますので、まずは子供の便に関心を持っていただくことが、どの家庭でもできる便秘改善のための取り組みと言えます。

また、小児は精神的なストレスによっても便秘になりますので、保護者には子供をできるだけ怒らず、やさしく見守るよう伝えます。あたたかく見守って、保護者が子供の味方であることを認識させることが、治療を進めるうえでとても重要なことです。

また、保護者に対して、生活習慣の改善の提案をするにあたり、「できなくてもいいんですよ。一緒にできることから考えてみましょう。」と伝えることも大切です。各家庭で生活スタイルも異なる現代では、家庭の事情によって、対応できないことも多いため、その場合でも再来して治療継続もらうために、「提案したことが改善できなくても大丈夫なので次回も来てくださいね。処方した薬剤が合わない、量の調整がうまくいっていないなどの場合もありますので、そういった状態を確認することも大事な治療です。」と伝えることも大切です。

小児の便秘を把握する問診項目

問診項目

小児の慢性便秘症では、訴えが多様かつ主観的で、それぞれで表現が異なるものですので、症状の聞き取りは多数の項目を客観的に聴取することが大切です。

1発症時期 ・・年・・月頃から、・・力月前から、およそ・・年前から、など
2排便頻度 平均して1週間に・・回程度・・ 日間に一度程度、など
3便の性状 硬さ(ブリストル便形状スコアを用いて)、色調、便柱の太さ、など
4自覚症状 腹痛、腹部膨満感、腹部不快感、残便感、腹鳴、悪心、食欲不振、など
5症状の頻度 ほぼ毎日、・・日間に一度程度、不定期に、ほとんどない、など
6既往歴 腹部手術歴、代謝・内分泌疾患、神経変性疾患、精神的疾患、など
7常用薬 抗精神薬、抗ヒスタミン薬、オピオイド薬、利尿薬、金属イオン製剤、など
8生活状況 良好な食事を摂っているか、十分な睡眠時間か、ストレスは多いか、など
9QOLの障害度 身体的QOLと精神的QOL

出典:中島淳編(2015)『臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識』医薬ジャーナル社

便秘の状態把握に有用なブリストル便形状スケール

診察では、ブリストル便形状スケールを使用するとよいでしょう。ブリストル便形状スケールは、便形状を7段階のイラストで示した、便の形状や硬さを評価する世界基準のツールです。便形状を保護者や小児自身に口頭で説明してもらうのは大変ですが、ブリストル便形状スケールのイラストを示しながらどれに当たるかを確認するとわかりやすく、お互いの共通認識を持つことができます。便のイメージを持つことは非常に重要なのです。当然、実際に便を見ることは難しいので、イメージを持つためにブリストル便形状スケールを用います。ブリストル便形状スケールは診察ブースの机の引き出しなど、すぐに取り出せるところにに用意しておくとよいですね。

ブリストル便形状スケール
1〜2:硬い便、3〜5:健康な便、6〜7:軟便、めざすのは4のバナナ状のウンチ

Lewis SJ, et al.: Scand J Gastroenterol 1997; 32(9): 920-924 より作成

便秘のお悩み相談カード

上記の問診項目を確認できる、保護者向けの便秘のお悩み相談カードです。以下のボタンからダウンロードしてご活用ください。

  • ※ダウンロード版はA4 PDFとなります。
監修

東京女子医科大学 小児科学講座 教授・講座主任
小児総合医療センター センター長

永田 智 先生

英国クイーンエリザベス小児病院、ロンドン大学大学院博士課程、順天堂大学小児科およびプロバイオティクス研究講座 准教授、東京女子医科大学病院副院長などを経て、2015年より現職。専門領域は消化器、呼吸器、膠原病、アレルギー、栄養、プロバイオティクスと多岐にわたる。
※2019年3月現在の情報です。